従来、ロボットといえば、人間が活動する環境から隔離された工場の柵の中で作業する産業用ロボットが主流でした。ティーチ&プレイバック方式によって、工場の生産ラインなどで、あらかじめ教示された同じ動作を繰り返し、精度よくこなすことが求められてきました。
しかし、昨今ではその状況が大きく変わり始めています。
工場の中でも、柵で隔離された環境だけではなく、人間と同じ空間で協働して作業するロボットが普及し始めています。また、物流業や小売業をはじめ、これまでロボットの利用が限定的だったさまざまな業種・業務・工程に向けても、新しいロボットが次々と登場しています。

さらに近年では、AI技術の進化により、周囲の状況を認識し、得られた情報をもとに判断しながら動作するロボットの開発も進んでいます。人間の動作データなどから学習し、実世界でさまざまな作業を行う「フィジカルAI」と呼ばれる技術も注目されています。
このように、さまざまな業務用ロボットが商品化される一方で、導入する企業側にはさまざまな悩みがあり、必ずしもロボット化・自動化が順調に進んでいるわけではありません。
利用者から見れば、ロボット導入はそれ自体が目的ではありません。あくまでも、生産性や業務効率の向上、省力化・省人化などを実現するための手段です。
特に中小規模の企業にとって、ロボットの導入にはさまざまな障壁があり、それらを一つひとつ乗り越えていかなければならないのが現実です。
その一方で、ロボットは決して安い買い物ではなく、導入には相応の投資が必要になります。

「その投資に対して本当に効果があるのか?」
「どのくらいの効果が見込めるのか?」
「そもそも、どの業務からロボット化すればよいのか?」
こうした疑問に対する答えが見つからず、ロボット化・自動化に踏み切れないケースは少なくありません。また、実際にロボットを導入したものの、思っていたほど稼働率が上がらず、当初想定していたほどの効果を得られていないケースもあります。
ロボット導入にあたっては、現場で働く従業員の不安や抵抗感も、決して無視することのできない課題です。
現場の従業員からすれば、それまで自分たちが行っていた作業をロボットが担うようになることで、「自分の仕事がなくなるのではないか?」という不安が生じることもあります。
そのため、単にロボットを導入するだけではなく、「人とロボットをどのように役割分担させるのか」「ロボット導入によって人の仕事をどのように変えていくのか」といったことを、現場と共有していくことも重要です。
また、企業が脱炭素化への取り組みを進める中では、「ロボット導入によって電力消費量はどの程度増えるのか?」「CO₂排出量への影響はどうなのか?」といった環境負荷についても考える必要があります。
ロボットの機能や性能が向上しているとはいっても、現段階では、従来人間が行っていた業務をすべてロボットに置き換え、それだけで仕事が完結するケースは限定的です。
多くの場合、現場で働く人や、人が利用している既存の業務管理システムなどと連携して、初めて一連の業務が成立します。
そのため、
「既存の業務管理システムとうまく連携できるのか?」
「現在の業務フローを大幅に変更する必要はないのか?」
「ロボットを導入した後の運用管理はどうすればよいのか?」
「トラブルが発生したとき、どこに原因があるのか把握できるのか?」
といった点を懸念される企業は少なくありません。
ロボットの台数や種類が増えれば、ロボットそのものだけではなく、それらをつなぐネットワークや業務システムを含めて、全体をどのように管理・運用するかという課題も重要になってきます。
ロボットを導入するためには、ロボット本体を設置するスペースだけではなく、それを動かすための物理的な環境整備も必要になります。

例えば、搬送ロボットを導入するのであれば、ロボットが安全かつ効率よく移動できる搬送経路を確保する必要があります。床に大きな段差があれば、その解消も必要になります。また、ロボットの稼働や充電に必要となる電源設備についても検討しなければなりません。
さらに、利用する場所や用途によっては、エレベーターや自動ドアなどの建物設備とロボットを連携させる必要もあります。
つまり、ロボットを購入して現場に置けば、すぐに期待した効果が得られるとは限らないのです。
ロボットを導入し、自動化の効果を最大限に引き出すためには、さまざまな準備が必要です。
いわば、ロボットが十分に能力を発揮できるための「地ならし」です。
重要になるのは、ロボットそのものだけではありません。「物理環境」「通信環境」「業務環境」「人的環境」まで含めて、ロボットが能力を発揮できる環境を整えることが重要です。
まず必要になるのが、ロボットが実際に活動する現場の物理環境の整備です。
例えば、

・ロボットを設置・稼働させるためのスペースの確保
・ロボットの搬送経路の確保
・床の整備や段差の解消
・ロボット本体や充電設備などに必要な電源の確保
などが必要になります。
さらに、利用する環境によっては、
・エレベーターとの連携
・自動ドアとの連携
・その他の建物設備との連携
なども必要になります。
ロボットが安定して、安全かつ効率よく仕事をするためには、ロボットに合わせた現場環境をあらかじめ設計し、整えておくことが重要です。
これから現場のさまざまな業務で利用されるロボットは、単独で動作するだけではなく、ネットワークを介してさまざまなシステムと情報をやり取りしながら仕事をするようになります。
ロボットと上位の情報管理システムをどのように連携させるのか。設備をメンテナンスする事業者やメーカーとどのように接続するのか。さらに将来的には、AIやクラウドサービスとの接続についても考慮する必要があります。

そのため、通信環境の整備は単に「有線LANを敷設する」「Wi-Fiを整備する」というだけの問題ではありません。
例えば、
・安定した有線・無線LAN環境の確保
・インターネット・クラウドへの安全な接続
・既存システムとの連携
・ロボットや設備から取得したデータの活用
などを含めて考える必要があります。
ロボットがネットワークに接続され、その先にあるクラウドやさまざまな業務システムと情報を交換するようになれば、ロボットだけを見てネットワークを設計することはできません。
接続するシステムや利用するデータ、セキュリティ、将来の拡張なども考慮しながら、ネットワーク全体を最適化して設計していくことが重要です。
ロボット化・自動化の効果を高めるためには、ロボットと既存の業務システムとの連携も重要になります。
例えば物流現場であれば、在庫管理システムやWMS(倉庫管理システム)などとロボットを連携させることで、単に「物を運ぶ」だけではなく、入出庫や在庫管理などを含めた一連の業務の中でロボットを活用できるようになります。
そのためには、
・WMSなど既存システムとの連携
・システム間をつなぐインターフェースやAPIの整備
・ロボットや設備から得られるデータの蓄積・活用
・蓄積したデータの将来計画への活用
といった視点も必要です。
ロボットから得られる稼働データや業務データを蓄積し、分析することができれば、現在の運用改善だけではなく、将来の設備投資や自動化計画にも活用することができます。
そして、忘れてはならないのが「人」と「業務」です。
これからのロボット活用では、すべての仕事をロボットだけで完結させるのではなく、人とロボットが役割を分担しながら仕事をする場面が増えていくと考えられます。
そのため、ロボット単体の効率だけを見るのではなく、業務全体として最適化することが重要です。
例えば、

・現在の業務におけるボトルネックの把握
・ロボット導入後の業務フローの設計
・ロボットを運用・管理する体制の確立
・運用管理者や現場従業員への教育・訓練
・業務の実行状況やロボットの稼働状況の可視化
・運用データに基づく継続的な改善・最適化
・次の設備投資計画へのフィードバック
なども重要になります。
つまり、ロボット導入は「機械を導入するプロジェクト」だけではありません。
人、業務、設備、ITシステム、ネットワークを含めて、現場全体をどのように再設計するかという取り組みでもあります。
当社では、ITシステム環境や通信環境も含めて、自動化・ロボット化に関するさまざまな課題の解決を支援しています。
特定メーカーの特定のロボットだけを販売するという考え方ではなく、お客様の現場の課題や経営目標を起点として、メーカーやSIerなどのパートナー企業とも協力しながら、最適な自動化・ロボット化のプランをご提案します。
ロボットの選定・導入だけではなく、物理環境、通信環境、業務システム、データ活用、運用体制、教育・訓練など、さまざまな側面からお客様の自動化・ロボット化を支援することで、投資に対する価値の最大化と、業務全体の最適化を目指します。


ロボットを導入することをゴールにするのではなく、導入したロボットが継続的に価値を生み出せる環境をつくること。
それが、これからの自動化・ロボット化において重要になると考えています。